特撮の話 仮面ライダークウガ episode40『衝動』、41『抑制』
「行きたくなったらいつでも行っていいぞ冒険」
「ありがとうございます、でももう少しこっちの冒険がんばります」
オープニングから、ビリビリする会話の応酬です。
「おっちゃん、誰かを殺してやりたいと思ったことある?」
仏教の「縁起論」
憎しみに対して怒りで返していたら、その連鎖は終わらない。クウガのテーマです。
実にこの世においては、怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みの息むことがない。怨みをすててこそ息む。これは永遠の真理である。「ダンマパダ」第一章五
何度でも反復しましょう。「仮面ライダークウガは子供番組」
子供番組は明確にテレビの前にいる良い子達にメッセージを伝えなくてはなりません。「グロンギは何故、殺人をゲームとして楽しむのか」とか、「クウガとは一体何者なのか?」は確かに重要なポイントです。しかし、作り手にとってみれば、それほど重要な問題ではありません。
「仮面ライダークウガ」の作り手にとって重要なポイントとは
- 良い子に正しく育ってもらう
- オモチャを買ってもらう
この二つです。特にこの二つ目は重要です。視聴率がよくとも、オモチャが売れなければ、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』のように終わってしまいます。
クウガの視聴者層、玩具販売に関しては色々と聞いていますけれど、それはそれで(笑)
最終回に向かって、見応え充分の充実したエピソードが続きます。どのような経緯かは別として、ドラマ重視にシフトしていることが成功している。
本エピソードの主軸となる奈々ちゃんの「誰かを殺してやりたいと思ってことあるか?」
理不尽な死。その恐怖は常に我々の常にすぐそばに存在する。貰い事故も然。しかし現在のコロナ禍、その理不尽な死の確率は確実に大きくなっている。今回のエピソードはそのまま、現代社会の状況です。
奈々ちゃんの受けるオーディションの課題、自分を「未確認生命に好きな人が殺された人」だと思って演技してください。出題者は特に意識していなかったであろが、その立場の人間はどう思うであろうか?奈々ちゃんはその課題に傷つく。追い討ちをかけるかのように「本当に好きな人が殺されたから、演技に生きるね」。さらに傷つく奈々ちゃん。
「人を殺したくなった」同情できる。
この気持ちを奈々ちゃんは五代雄介に吐露する。雄介はじっと自分の拳をみる。「俺コレを使ってすごく嫌な気持ちになる」 「暴力に対して、暴力での解決は暴力の連鎖でしかない」
「五代さん言っていること、綺麗事ばかりじゃないか!」このセリフの雄介の返しが最高です
「そうだよ。だから現実にしたいじゃない」
このドラマのテーマをキッチリ五代雄介に無理なく言わせる。荒川稔久さん「流石です」
ここで、一条さんからスクランブルの連絡がはいって出動する。
やるな〜。自然に前のめりになります。だからクウガが好き。
さて、特撮の部分にも触れましょう。
今回のサメ女はめちゃくちゃ強い。緑のクウガになって上陸するところ、射撃をする狙い撃ちをしようと試みるが、ダグバの気配を感じた瞬間、槍で肩をつら抜かれる。血を流しながら、うめくクウガ。この絵の作り方、完全にホラーだ!
もう一度、声を大にして言いましょう「仮面ライダークウガはホラー」
Twitterでもいいですけど、ライダーがここまで傷つき、血を流して戦うシリーズがあったか、教えてください。
その後、バイクがどうなった?聞くのは無粋って奴です。
それにしてもサメ女は強い。青の金の力でも勝てない。
紫のクウガとサメ女の肉弾戦は迫力満点。最後は参考資料によると、
ダブルライジングタイタンフォーム、
二本の刀でようやく勝利する。
ドラマも特撮も見所満載のエピソードです。
今回の奈々ちゃんと雄介の会話はしっかり抑えてもらいたい。このやり取りは物語のテーマであり、最終話『空我』で反芻されます。
では、またよろしくお願いします。